スプリセル® (ダサチニブ) 添付文書
スプリセル® (ダサチニブ) 添付文書
A ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合します。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC,LCK,YES,FYN),c-KIT,EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害します(引用[2])。
<詳細>
(1) ダサチニブは特定の蛋白チロシンキナーゼのキナーゼドメインにあるATP結合部位においてATPと競合します。BCR-ABLのみならずSRCファミリーキナーゼ(SRC, LCK, YES, FYN)、c-KIT、EPH(エフリン)A2受容体及びPDGF(血小板由来増殖因子)β受容体を阻害します(IC50=0.2~28 nM)。一方、他の関連性のない蛋白チロシンキナーゼ(FAK、IGF1受容体、インスリン受容体、HER1/HER2受容体、VEGF受容体-2、FGF受容体-1、MEK、MET、EMT/ZAP-70、SYK)及びセリン/スレオニンキナーゼ(P38、PKA、PKCキナーゼ、GSK-3、CaMKII等)に対しては阻害を示さず、SRCに対する阻害活性はこれらキナーゼの100~20,000倍高いことが示されています。
(2) 分子モデリングの結果、ダサチニブはABLキナーゼドメインのA-ループが閉鎖状態にある不活性型(閉鎖型)立体構造に結合すると考えられ、また、X線結晶構造解析により、A-ループが開放状態にある活性型(開放型)立体構造にも結合することが示されています。
A 本剤は、周りをフィルムコートでコーティングしており、添付文書でもかまずに服用するよう注意喚起をしておりますので、粉砕はお控えください。
また、安定性データ、有効性・安全性データがなく、承認された剤形での投与ではないことから、お勧めいたしません。
◆スプリセル錠 添付文書(引用[1])
14. 適用上の注意
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 本剤は,かまずにそのまま服用するように注意すること。
A PTPから出して、一包化した状態での安定性データを取っていないため、PTPシートのまま処方していただきますようお願いいたします。
<参考>
本剤はフィルムコート錠です。製剤の苛酷試験の結果、40℃/相対湿度75%/シャーレ開放/6か月の条件下では、1ヵ月まで水分が2%増加し、それに伴い硬度の低下が認められたのみでした。25℃/相対湿度60%/シャーレ開放/12か月の条件下では、水分が1.5%増加し、それに伴い硬度の低下が認められた以外に変化は認められませんでした。
また、25℃/相対湿度95%/24時間、40℃/相対湿度75%/6ヵ月の条件下で吸湿性を示さなかったことから、ダサチニブは吸湿性物質ではないと判断されました(引用[2])。
A 本剤はCYP3A4を阻害する薬剤と併用注意です。 本剤とケトコナゾールの併用により、ダサチニブのCmax及びAUCはそれぞれ4倍及び5倍増加しましたので、CYP3A4阻害作用のない又は代替薬の使用が推奨されます。CYP3A4阻害作用の強い薬剤との併用が避けられない場合は、有害事象の発現に十分注意して観察を行い、本剤を減量して投与することを考慮してください(引用[1])。
A ダサチニブはCYP3A4の基質となる薬剤と併用注意です。CYP3A4の基質となる薬剤の血中濃度が上昇する可能性があります。ダサチニブとシンバスタチンの併用により、シンバスタチンのCmax及びAUCはそれぞれ37%及び20%上昇しました。ダサチニブを治療係数が低いCYP3A4の基質となる薬剤と併用する場合には注意して下さい(引用[1])。
A 本剤はH2受容体拮抗剤と併用注意です。H2受容体拮抗剤又はプロトンポンプ阻害剤との併用は推奨されません。本剤投与中は、これらの薬剤に替えて制酸剤の投与を考慮してください(引用[1])。
A 本剤はプロトンポンプ阻害剤と併用注意です。H2受容体拮抗剤又はプロトンポンプ阻害剤との併用は推奨されません。本剤投与中は、これらの薬剤に替えて制酸剤の投与を考慮してください(引用[1])。
A 本剤はQT間隔延長を起こす薬剤と併用注意です。ダサチニブ及びこれらの薬剤はいずれもQT間隔を延長させるおそれがあるため、併用により作用が増強する可能性があります(引用[1])。
A 海外の臨床試験において、1日280mgを1週間服用した過量投与例が報告されており、重度の骨髄抑制がみられました。過量投与が認められた場合には、患者さんの状態を十分観察し、必要な対症療法を実施すること(引用[1])。
A 体液貯留(胸水含む)は重大な副作用の一つであり、胸水(17.3%)、肺水腫(0.6%)、心嚢液貯留(3.0%)、腹水(0.3%)、全身性浮腫(3.5%*))等が報告されています(引用[1])。
*海外臨床試験における副作用発現頻度
添付文書 重大な副作用には、以下のことが記載されています。
「呼吸困難、乾性咳嗽等の胸水を示唆する症状が認められた場合には胸部X線の検査を実施すること。重篤な胸水は、必要に応じて胸腔穿刺、酸素吸入を行うこと。本剤投与中は患者の状態を十分に観察し、体液貯留が認められた場合には、利尿剤又は短期間の副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な支持療法を行うこと。」(引用[1])
A 添付文書上、肝障害のある患者は、高い血中濃度が持続されるおそれがあるため慎重投与に該当します。投与に際しては、患者の状態を十分に観察し、リスクとベネフィットを十分に考慮し上で、医師の判断でお願いします(引用[1])。
臨床試験では、GLT(GPT)又はAST(GOT)が正常値上限の2.5倍を超えている、又は総ビリルビンが正常値上限の2倍を超えている患者は除外されました(引用[3])。
◆スプリセルの代謝・排泄経路
ダサチニブは主にCYP3A4により代謝され,活性代謝物は主にこのCYP3A4を介して生成されます。その他に,ダサチニブはフラビン含有モノオキシゲナーゼ酵素3(FMO-3)及びUDP-グルクロニルトランスフェラーゼ(UGT)により代謝されます。ヒト肝ミクロソームを用いた試験では,時間依存的(阻害薬が消失してもすぐに活性が回復しない)な弱い阻害作用を示しました(引用[1])。
A 本剤は、「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」には禁忌となっておりますので投与をお控えください。外国において,妊娠中にダサチニブを服用した患者で,児の奇形及び胎児水腫等の胎児毒性が報告されています。また,動物実験において,ヒトでの臨床用量で得られる血漿中濃度以下で,ラットで胚致死作用及び胎児毒性,ウサギで胎児毒性が報告されています(引用[1])。
<参考>
オーストラリア分類:D(引用[2])
■胎児への影響(生殖発生毒性試験)
1)ラット及びウサギの胚・胎児発生に関する試験
本剤をラット及びウサギの器官形成期に投与すると、母動物に毒性を発現しない投与量で胎児異常を誘発したことから、本剤は両動物種における選択的な発生毒性物質と考えられました(引用[2])